ドル円が売られている、と言うより円が買われている、と言った方がよいであろうか。先ほど156.71円を付け、1月6日以来の円高水準となった。市場の説明では、円金利上昇で日米金利が縮小したこともその要因、との解説があるが、それは昨日から今日にかけてのごく短期の変化によるもので、説明としては間違えていない。しかし筆者は、本質的には中央銀行の金融政策に関わることと、読んでいる。
まず事実を整理しておこう。日米の10年国債利回り(終値)とドル円相場の最近の推移は下記のとおりである。
米国 日本 金利差 ドル円
2024/12/31 4.572% 1.082% 3.490% 157.18円
2025/1/9 4.688% 1.176% 3.512% 158.04円(雇用統計前日)
2025/1/14 4.792% 1.239% 3.553% 158.05円(昨日)
2025/1/15 4.767% 1.240% 3.527% 157.11円
今年に入って、確かに日本の10年債利回りが連日のように上昇している。今日は高値が1.256%と、2011年4月以来の高水準となった。昨年末は1.082%(終値ベース、以下同じ)だったので、半月で0.17%上昇したことになる。ただ、日米金利差の点では、米金利も上昇(同期間のドル金利の高値は4.823%、上昇幅は0.251%)している。むしろ金利差は拡大しているので、円が買われる要素ではない。ではなぜこの動きが円高の要因になってるのか?
答えは、市場は既に日銀の利上げを織り込み始めたから、ではないだろうか。理由の一つは植田総裁、氷見野副総裁が言葉を選びながらも、講演会や記者会見で利上げにむけての地ならし発言を繰り返していることだ。時期は明確にしていないが、春闘の結果で利上げすると滲ませている。一方で米国は次回(1/28-29)は、米景気動向が好調であることを背景に一旦利下げを休止するとの見方が高まっている。もっとも本日の米CPIの結果次第ということでもあるが、予想はやや上向き、少なくとも高止まりとなっているので、少なくとも利下げ休止の見方が強まるとみている。そのCPI予想は、年率で、総合が2.9%(前回2.7%)、コアが、3.3%(前月3.3%)、前月比はどちらも+0.3%(前回は、どちらも+0.3%)となっている。
二つ目の理由は時期である。1月は展望レポートが発表になる。日銀としても見通しに合った政策として整合性を取りやすい。マイナス金利の導入は、2016年1月であった。今回会合は、マイナス金利政策をはじめ、過去の金融政策の効果を分析した「多角的レビュー」を前回発表したことを受けて、政策変更を印象付けやすい時となる。これで名実ともに植田時代が幕をあけることになる。
今月は日米欧中央銀行の政策決定会合があり、この3行の中で日銀はトップバッター(1/23-24に開催)であり、否が応でも金利動向に敏感になる。言葉を変えていえば、この展開は「市場から日銀への利上げ催促」と考えたい。政策決定発表当日の24日(8時半)は、日本全国の12月消費者物価が明らかになる。前月がコア(生鮮食品を除く総合)が年率2.7%、コアコア(生鮮食品とエネルギーを除く総合)が2.4%であった。最近の物価上昇を見れば、12月も上昇の流れは続くであろう。この点でも政策金利は上げやすい。筆者は今月の日銀会合では0.25%引き上げと予想している。
今後1週間の相場予想であるが、ドル円は日銀会合までは円が強含み推移と考え155.50-157.50円と予想。またユーロドルは、物価低下、ユーロの柱ドイツの政治経済の弱体化を嫌気して1.0125-1.0375と更にユーロ安を予想。ユーロ円は159.00-163.00円とユーロ安予想。そして英ポンドドルは本日発表の英国消費者物価低下を受けて1.1950-1.2350とポンド弱含みと予想する。
(2025/1/15、 小池正一郎)
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