終値が約10か月ぶりの147円台となった9月5日以降、介入警戒感もあって一時145.90円まで下落したが、その後じりじりとドルは値を上げ、ほぼ毎日、年初来高値更新を続けている。現在148.16円まで上昇(執筆時点)、150円を視野にドル買い圧力が高まる流れを感じる。ただ、チャート的には148円台には節目が多く、まずは148.40円、次に148.85円がポイントとして捉えている。
一方で、当局も急激な円安には黙っていないだろう。財務大臣、財務官からのけん制発言が続いている。昨年9月・10月のドル売り介入前にも、同様な展開があった。東京時間だけでなく、海外での介入実績もあるので、市場からは目を離せない。今日のFOMCの結果次第では、ドル売り介入が再現される可能性が高いと警戒しているが、その効果は今週末の日銀会合の決定次第にもよる。ただ、今日はよほどのことがない限り、あっても口先介入だけだろう。
ところで、介入に関しては、実施のハードルが下がってきているのではないだろうか。他の国でもドル売り介入の実施が報告されている。通貨安が目立つ中国とインドがその代表的な例だ。経済規模、資本市場残高はそれぞれ違うが、両国とも国際金融市場では存在価値を高めている立場なので、日本としても介入がやりやすい環境になったとも考えられる。
そこで、第一のヤマ場として注視しているのは、今晩の米FOMC(連邦公開市場委員会)である。個人的には、どちらにしても金利差や政策の方向性に日米の差が大きく縮まることは考えにくく、「材料出尽くし」として、ドルは買い進まれると予想している。いわゆる工事渋滞で止められていた流れが、工事完了を受けて一気に動き出す、と同じ状態である。
さてFOMCは、年8回開催され、それぞれ重要であるが、中でも3・6・9・12月は注目される。会議の主要メンバー(FRB理事、および地区連銀総裁)による、金利見通し表、いわゆるドットチャート(DC)が、経済見通しと合わせて発表になるからである。DCとは年度末の適切なFF金利(FRBがターゲットとしているFederal Fundフェデラルファンド・オーバーナイト金利)が投票者別に点(ドット)で明らかにされるものだ。前回(6月)の2023年度末の見通し平均は5.625%(レンジでいえば5.50-5.75%)であり、現在の設定金利5.25-5.50%より0.25%高い。この見通しに照らしていえば、今年はあと一回の利上げが適切と見なされていることになる。
一方で、シカゴの金融先物市場で計測され公表される、FOMC会合日毎の金利変更見通し、いわゆるフェッドウォッチにも注目したい。今日現在明らかになっている今回FOMCの金利変更見通しは、「据え置きが99%、すなわち今回は利上げなし」である。として、前回6月のDCを踏襲すれば、残り2回(10/31-11/1と12/12-13)のうちどちらかのFOMCで、利上げの可能性が残ることになる。今回のFOMCで注目されるポイントは2点、一つは今回金利変更を行うか、そしてもう一つは、利上げは打ち止めになるか、6月と同じくもう一回の利上げが想定されるか、である。筆者の予想は、どちらか一つにはっきりと区別されることなく、平均値ではどちらにもとれるドットになるのではないか、である。この見方について、パウエル議長の記者会見を重く注目したい。
一方、日銀の政策決定会合の結果発表は22日だが、大枠は現状の金融政策を維持したうえで、現在の論点整理を明らかにし、今後の変更タイムスケジュールの考え方を示すと予想している。金利のない世界から金利のある世界への準備を促すことになるだろう。
そこで、今後1週間の相場見通しだが、ドル円については146.00-149.00円とドル高を予想する。一方ユーロドルは、前週と同じ1.0550-1.0800、対円は156.50-159.50円とユーロ高と予想する。また英ポンドドルは、先週よりポンド安の1.2200-1.2500と予想する。
(2023/9/20、 小池正一郎)