今晩(4月10日)の米CPI(消費者物価指数)は、世界中の目が一心に集まる一大イベントだ。ドル円にとっては、152円を挟んでの攻防と、ドル売り介入が入るかどうかの瀬戸際でもある。今市場に起きているは何か、考えてみたい。
まず直近のことで①今晩のCPIの結果とその後のシナリオを考える。②市場で高まっているFRB利下げ時期の後退感に対するFRBの本音とその対策。そして③今週11日に開催されるECB(欧州中央銀行)の政策変更の有無への見通し、更に④金相場の高騰の背景と今後の見通しである。視野を広げると、世界の株式相場も視界から遠ざけてはいけない、との気持ちもある。特に日本の株価については、海外投資家の為替ヘッジの動向によってはドル円の行方に結びついてくるので、放ってはおけない。
まず今晩のCPIだが、予想は下記の通りである。
前月比(前月実績) 前年比(前月実績)
総合 +0.3% (+0.4%) +3.4% (+3.2%)
コア +0.3% (+0.4%) +3.7% (+3.8%)
前月比では伸び率は落ちるが、+0.3%は2か月前と同じで、インフレが進んでいるという意味では高いままとの見方になる。また年率で見ると、コアは0.1%の低下予想だが、総合では0/2%も上昇する予想であり、両方合わせて、FRBのインフレターゲットである2%からは遠いままだ。特に原油価格を中心としたエネルギー価格の上昇が高く懸念されるが、FAO(国連食糧農業機関)から、7か月ぶりに食糧価格の上昇が報告されたばかりでもある。ヘッドライン(最初に出る指数)だけでなく、項目ごとの変化内容にも注意を払いたい。
そこでシナリオになるが、予想よりも少しでも上振れした場合は、金利高、ドル高に動くと予想し、ドル円は一気に152円突破となるだろう。ただ介入の可能性がこれも一気に高まることも想定して、ドルは急騰することはなく、高くても152円台後半で止まると予想する。介入がなくてもそこからドルは下落、再び151円台前半になると予想したい。
ただし、ドル買いの勢いが余って153円台になれば、ドル売り介入が入る確率は一気に高まるだろう。まさに今日は日米首脳会談が行われる日。筆者の想像では、バイデン大統領は「フミオ。好きなことを好きなだけやってよい!」とドル売りにお墨付きを与えるだろう(総理が、その見返りの大きさをどこまで斟酌するかが、見どころだが。)
そしてこの後にやってくるのが、②FRBの利下げ時期と回数の問題である。その前に、今日突然と米銀の一つが「6月に0.50%利下げ、今年中に1.50%下げる」との予想を出したと伝わってきた。「エッー!?」と筆者が考えてもいない予想だった。もし今日のCPIが予想を大きく下回ると、この大きな利下げ実施はあり得ないことはない。これまでパウエル議長はじめ、FRB高官の発言は、ほとんど利上げの後ズレを示唆する発言で、中には「年内、利下げの必要ない」と発言する連銀総裁も出てきた。今後、多くの経済指標が続く。個別の数字でなく、大きな流れを見失わないようにしていかなければならない。
④金の動向については、「金相場単体」のことだけでなく、裏に隠れた思惑や通貨制度への揺さぶりのようなことがあるのではないか、と注目している。世界情勢を考えると、安全資産としての金の価値は上がるこそすれ、大きく下がることはないと考えている。機会を改めて、取り上げていきたい。
さて、今後1週間の相場予想だが、今週は③ECBの理事会が11日に開催される。市場予想は、今月は据え置き、6月から利下げ開始で、筆者もそのように見ている。ただ、記者会見でラガルド総裁が、今後の方針をフォワードガイダンスの形でどのようの表現するのか(6月利下げ実施の確率を高めるのか、曖昧にするのか)、注意を要する。そこで、ユーロドルの予想は、利下げ確率を高めると予想し1.0650-1.0900とユーロ安に予想、対円では162.00-166.00と小幅ユーロ高と予想する。ドル円は、介入があれば瞬間ドル下落の場面もあると考えて148.80-152.80円と広めに予想する。そして英ポンドドルは1.2500-1.2800とポンド高と予想する。
(2024/4/10、 小池正一郎)