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第596回 ~ドル円10月三つの注目点~

2024年10月02日

今回は荒れた9月相場を振り返り、10月相場の展開を考えたい。
9月のドル円は、月中変動幅は7.63円(高値147.21円、安値139.58円、以下相場は筆者使用チャートによる)だった。9月月初に、一時的かもしれないが140円割れあり得ると予想していたことを考えれば、予想通りの展開だったと総括している。

このきっかけは7月以降の日本のドル売り介入だが、背景は日米金利差の縮小見通しが急速に拡大し、それまで積み上げたキャリー取引(円売りドル買いポジション)の利食いチャンスを探していた投機筋に、ピッタリの材料となったことだ。(この勢いはまだ続いている)。

ところで、変動幅にフォーカスを当ててみると、今後の相場予想、取引戦略に参考になる傾向が見えてきた。9月の変動幅は、前月(同9.22円)に比べ小さいものの、先週末27日の石破ショック(株だけでなく、ドル円でもそう言える)の変動幅が大きかった(それも短時間で3円の下落だった)ゆえに、乱高下の月だったとの印象となる。ちなみに月間変動幅の今年の平均は7.75円(1月~8月、最高が7月12.34円、最低が2月4.98円)で、9月も大きかったが、それでも平均並みとわかり、驚くに値しないことだった。そして異常気象が通常になってきたことと同じで、今後はドル円も平均7円以上は動くものだと思っていかなければならないと感じた。

さて、この変動の背景・要因は10月以降も引き継いでいるが、これからはこれまで以上に新しい材料が前面に出てくるので、変動幅も拡大していくだろうと警戒している。その第1は、日米(特に米国)の金融政策である。第2は米国景気動向、第3は世界政治に波乱の芽である。筆者の予想は、米ドルの緩やかな低下である。10月のドル円予想レンジは138-146円(月末141円)としている。

まず、第1の金融政策であるが、米FRBはいよいよ利下げを開始した。それも通常より大きい0.50%の利下げ、しかもFOMCで同時に発表されたドットチャートでは、今年中にあと2回(0.25%X2)で0.50%利下げ、2025年は合計で1.00%、2026年は0.5%引き下げ、2026年末のFFレートは2.875%との見通しを出している。米国は引き下げ、日本はゆっくりとは言えども引き上げていく、とすれば、おのずと日米金利差は縮小する。ただ、逆転することは当面ないと言えて、表面金利ではドル優位が続くので、一気にドル安が進むとは考えていない。あくまでもゆっくりと徐々であるが、今年中はドル安基調が続くと考えている。

そして、その米金融政策に大きな影響を与えるのは、米景気動向である。パウエル議長も幾度となくデータ次第と発言しているが、中でも雇用動向と物価動向が肝である。もちろん他のデータも軽重はあれども無視できない。相場はデータの発表毎に変動することは知っての通りである。今は、「R(リセッションの言葉)」は聞かれない。ソフトランディング(GDP成長率で1%以下)の見通しが勝っているように思える。その見通しが変化するようなデータ(特に個人消費、住宅)が出てくれば、金融政策も変化していくと常に気配りをしていかなければならない。合わせて昨日ドル高要因になったようなパウエル議長の講演・発言には注意を要する。市場(と言うよりコンピューター)が瞬時に反応するので、その方向が正しいかどうかの見極めも必要だ。慌てて追随しないことも判断の一つである、

最重要指標の第1弾が、今週末の雇用統計である。代表的な指標の最新予想は、非農業部門雇用者数が14万人(前月は14.2万人)、失業率は4.2%(前月4.2%)となっている。昨日発表になった求人動向(JOLTS)も、パウエル議長がジャクソンホール講演で使用したチャートに使用されているので、重要性が高まっている。

最後に政治動向である、日米とも大きなイベントがあり、加えて最近では中東情勢の緊迫化が相場に影響を与えている。原油価格は昨日窓を開けて上昇、金相場も史上最高値を更新している。これについては、米大統領選挙はじめイベントが多いので、後日まとめて書きたい。

さて、今後1週間の相場見通しであるが、ドル円は、短期的には141.00-145.00円とドル高基調と予想する。一方欧州通貨は、ユーロドル、ポンドドルとも先週は年初来高値となり、ユーロは1.1214と2023年7月以来、ポンドは1.3434と2022年3月以来の高値を付けた。(ただ今週に入って値を崩し下落)。ユーロは10月17日理事会で再度利下げの予想も出ていることから、今週は対ドルでは1.0950-1.1150、また対円では155.00-159.00円と小幅ユーロ安を予想する。そして英ポンドドルは、今回も先週と同じ1.3000-1.3300と予想する。

(2024/10/2、 小池正一郎)

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・SBI新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。

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