150円は近くて遠いように見えるが、高い壁ではない。ただ、超えるために準備が必要なだけだ。その準備とは、「主に時間(日柄)」「従に政治」と考えている。筆者がポリティカル・エコノミーを大事にしている根源がここにある。
まず時間。今回の150円突破チャレンジは今年3回目である。これまでの流れで言えばもう150円を突破してもよい。今年150円を超えた時と比較してみる。一回目は今年2月前半、149円台が3営業日続いたのち4日目(2月18日火曜日)に一気に150円の節目を超え150.88円までドルは買われた。
そして二回目は、3月19日(火曜日)に再び150円を超えた時だ。この時は2月18日に150円を超えた後しばらくは150円台前半で推移し、一旦は146.49円までドルは下落した後であった。3月19日に一気に2.10円ドルは急上昇した。それ以降3か月間上昇を続け、4か月目の7月3日に161.95円を付けた。
それに比べて今回は、10月4日から、149円台の取引が始まった。それ以来、10月14日の149.98円を含め、8営業日149円台の取引が続いている。比べることに意味があるのかという意見はあると思うが、相場の世界、アノマリーという現象、相場のクセを何回も経験している筆者にとって、どちらかと言えば大いに参考にする立場だ。150円を超える瞬間は近い。しかし、たぶんその期間は短いと筆者は予想している。
そして政治。ドル高の主な、端的に言えば、日米金融当局(FRBと日銀)の金融政策差、すなわち金利差の拡大で、高い所にお金が流れるという基本に沿った展開である。その政治に関し、来月投票日(11月5日)を迎える米大統領選挙に関わるアノマリーが参考になる。それが「オクトーバーサプライズ」である。
これは、米大統領選挙の前月10月に選挙戦に大きな影響を与えるサプライズ(予想し得ない出来事)が起こることを意味する。歴史を紐解くと、これまでこんな例が挙げられている。1980年の「イラン米国大使館人質事件」(強いレーガン大統領を演出し、カーター候補に勝利)がその起源と言われている。近年では、2004年「2001年米国同時多発テロ首謀者ビンラディン報道(10月30日)」(ブッシュ大統領勝利)、2008年「リーマンブラザース危機への対応不安報道」(オバマ勝利)、2012年「大型ハリケーン発生、対応の巧拙(10月下旬)」(オバマ再選)、2016年「クリントン候補の私用メール問題再捜査発表(10月28日)」(トランプ逆転勝利のきっかけ)、2020年「トランプ大統領の新型コロナ感染、ホワイトハウスでクラスター発生(10月1日以降)」(トランプ再選ならず)。
これらに対し、今年2024年の選挙戦には、これまでにところ「驚くべき安定性がある」と論評されている。過去との比較において、選挙投票日までまだ3週間もあり、10月下旬に何かが起こってもおかしくない、との見方も根強く語られている。「もしトラ」でドル高、「もしハリ」でドル安との予想も耳にするが、筆者は現状偏った見方はとっていない。
ただ、何かが起こった時、それは政治的な陰謀かもしれないし、自然災害、あるいは地政学的紛争かもしれない。ウクライナ、イスラエル、イラン、北東アジアなど、米国政治が切羽詰まっている中で、過去のイベントのような選挙結果を左右する出来事が起こる可能性は、依然として残っていることを肝に銘じておかなければならない。米国大統領候補者からの情報戦はますます激しくなると、米国発のニュースに神経を尖らせている。
さて、今後1週間の相場見通しであるが、ドル円は、147.80-150.20円と神経質ながらややドル高基調と予想する。一方欧州通貨は、明日(10月17日)のECB理事会では今回の利下げに加え、継続的な利下げ予想の高まりがあることや、一部ではあるが、パリティ(1ユーロ=1ドル)割れの声も出始めていることから、対ドルは1.0550-1.0950と大幅ユーロ安を予想、また対円では159.00-163.00円と予想する。そして英ポンドドルは、本日今年8月20日以来の1.3000割れとなり、今週は1.2800-1.3100のポンド安と予想する。
(2024/10/16、 小池正一郎)
FX・CFD・証券取引・外国為替のことならマネーパートナーズ -外為を誠実に-