トランプ候補の優勢が伝えられて、ドル買いの勢いが増してきたようだ。ここまで円安が進むとは思っていなかった。米大統領選挙が終わるまで、政治的にはドルの強さは変わらないのではないか。よほど、米国経済が悪くならない限りという前提はあるが。
今日ドル円は152.56円(執筆時点、以下同じ)、7月31日以来の円安となった。過去3日間で約3.50円のドル高円安、月間ベースでも9月末終値(143.71円)から8.85円の円安、今年の変動レンジでも4番目の大きさだ。ドル相場全体の強さを計るドルインデックス相場(DX)を見ても、今日の高値は104.353(同)で、8月2日以来のドル高である。逆にユーロは8月2日以来、ポンドは8月19日以来、それぞれ安くなっている。
この要因は日本側、米国側両方にあるが、端的に言えば、日米とも今後の政治経済に大きな影響を及ぼすことが見込まれる重要な選挙を控えていることだ。日本は、今週日曜日に衆議院選挙。米国大統領選挙も11月5日に控えているが、投票日が近付いていくにつれて、勝敗について少しずつ方向性が見えてきたことで、その思惑がドル円を押し上げているように見える。
日本については、政治に安定性が増すとは考えにくい。海外筋からは、確固たる結果になるとの期待は聞こえてこない。むしろ政権交代の可能性、少なくとも連立の枠組み組み換えはあり得るなど、政治の流動化への警戒が高まっている。為替相場(他の金融市場でもそうだが)では、不安定な状態を嫌う。円安進行への思惑が高まっている所以である。
一方、米国大統領選挙動向であるが、投票日まで残り13日。特に激戦州における票の奪い合いが激化しており、ここ2-3日急速に優劣が逆転しているとの報道が増えている。「もしトラ」の復活である。22日現在激戦州(アリゾナ、ネバダ、ウイスコンシン、ミシガン、ペンシルバニア、ノースカロライナ、ジョージアの7州、選挙人計93票)すべてでトランプ候補が優勢となっている。
現在ほぼ確定しているのが、ハリス候補が226票で、トランプ候補が219票だが、もし激戦州でトランプ候補が全勝すれば312票となり、圧倒的な差でトランプ候補の勝利となる。米国からの情報では、中でもキーとなるのはペンシルバニア州(19票)で、ここが今の段階で最重要選挙区だと言う。
ところで、トランプが勝った場合を、前回の相場ではどうなったか調べてみた。勝利決定の瞬間からドルは買われた。6週連続してドルは上昇し、101円台前半から、118.66円まで約18円弱のドル高となった。ドルインデックス(DX)で見ると、就任式(2017年1月20日)前に103.82の高値を付けた。 もっとも、その後のトランプ大統領(当時)の言動には、ドル高を否定する発言があったことも注意しておかなければならない。すなわち就任式前の高値に対し「ドルは強すぎる」と不満を示し、就任式(DX100.64)後にドルDXの100以上が続くと、「ドルが強すぎる(17/4)」、「あまり強すぎないドルが好き(17/7)」とドル高牽制を続けたことだ。
2020年まで通じて分かったことは、DX100以上はレッドカード、DX95以上はイエローカードとして、ドル高牽制発言を繰り返した。逆にDX90を割ると「強いドルを好む(18/1)」と言っているので、DX90以下を筆者はグリーンカードとして、ドルを買ってもよい水準と捉えていた。今回が同じようになるかは現状不明だが、相場予想の考え方にはある程度のヒントになるのではないかと考えている。現在DXは104台、以前の基準では「ドルは強すぎる」ことになる。今後のトランプ発言から、8年前と同じが違うか、注目していきたい。
さて、今後1週間の相場見通しであるが、ドル円は、149.80-153.80円とドル高基調継続と予想する。一方欧州通貨は、対ドルは1.0650-1.0900とユーロ安を予想、また対円では163.00-166.00円とユーロ高と予想する。そして英ポンドドルは、来月の会合(11/7)での政策金利引き下げを見越して、1.2780-1.3020のポンド安と予想する。
(2024/10/23、 小池正一郎)
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