トランプ次期大統領(以下トランプ)は、着々と人事を進めている。それに合わせているかのように、金融市場もいわゆるトランプトレードが拡大している。債券安(利回り高)、ドル高、株安だ。背景はトランプ政策から引き起こされると想定されるインフレ懸念、そして金利高警戒である。更にこのドル高の流れに、別の大きな力が働いているように感じている。それはトランプ自身の存在であり、「アメリカ・ファースト」の威力であり、この流れは始まったばかり。よってドル高基調はゆるぎないとの認識である。
このような状況で、ドル安への方向転換があるとすれば、予想外の米景気後退とドル売り介入の2点のみと想定している。またFOMC決定の比重も、選挙前よりかなり低下しているように思える。7日に米国政策金利が0.25%引き下げられ、次回12月以降も引き下げプログラムが継続されるとの見通しも、つむじ風のように飛んで行ってしまったようだ。金利低下も“トランプの勢いには逆らえない”ということだろうか。
具体的に、米国2年債の利回り(終値ベース)の変化からその動きを読み解いてみる。投票日5日は4.187%だったが、トランプ勝利が伝わった6日は4.264%に上昇した。しかし7日のFOMC後には、4.194%に低下、市場は金利低下の方向性に素直に反応した。だが、トランプ人事が明らかになるにつれて、政策の本気度を感じはじめた。8日には4.250%まで上昇、更に週が開けると、インフレ懸念が強まったことで債券は売られ、連休明けの12日は4.342%へ上昇した。1週間で0.155%の上昇(10年債は同期間で0.149%上昇)となった。それだけ、トランプのインパクトが大きいことが明らかになったと言えよう。
この間のドル円(NY市場終値ベース)でみると、投票日5日は151.43円だった。しかしトランプ勝利が決まった6日には154.31円とドル高に上昇したが、FOMC後の週末8日には152.56円に下落。そして週明けには、ドル上昇の勢いが徐々に高まり、今日午後には155円を超え、欧州市場では7月24日以来の155.24円の高値を付けた。日本の10年債利回りが1.04%に上昇(11/5は0.933%)したにも拘わらず、日米金利差が拡大したうえ、アメリカ・ファーストの威力で、世界の投資資金の流れが米国へ向かいはじめたことが明らかになってきたことも、ドル買いの勢いが増した要因となっていると考えている。
ところで、ドル高要因として、来年トランプ大統領就任後に鮮明になってくるのが、債務問題である。2025年1月1日が期限切れになる債務上限モラトリアム法案を控え、政権発足前から共和党が延長を否定するなど、トランプ政権が大ナタを振るうことが想定される。そうなれば政府機能の閉鎖など、ドル安要因が一気に浮上する。しかしそこで登場するのが、マスク氏である。
トランプ氏は、マスク氏を政府効率化担当に指名することを明らかにしているが、同氏はこれまでの政府の無駄を削減、政府債務を減らし、小さな政府とすることを既に発言している。債務縮小は、ドル安要因の低下となる。実現するには時間がかかることになろうが、為替相場動向には無視できないのでしっかりとウォッチしていきたい。
さて、今日は米国の消費者物価(CPI)が発表になる。トランプ>FRBの比重変化はあっても、されど中央銀行である。12月FOMCの決定に影響が少なからずあると、押さえておきたい指標である。市場予想(カッコ内は前月実績)は、
前月比で、総合が+0.2%(+0.2%)、コアが+0.3%(+0.3%)
前年比で、総合が+2.6%(+2.4%)、コアが+3.3%(+3.3%)
である。どちらにしても、下げ止まりとなると、ドルは底堅く推移することになろう。
さて、今後1週間の相場見通しであるが、ドル円は、153.00-156.00円とドル堅調推移と考える。一方欧州通貨は、ユーロはパリティへの下落論再燃や、ドイツの政局不安も加わり、対ドル、対円ともほぼ先週の予想に近い展開となったが、今週も対ドルで1.0500-1.0850とユーロ軟調と予想、また対円では先週と同じ163.00-166.00円と予想する。そして英ポンドドルは、今週初に大きく売られたが、引き続き1.2580-1.2880とポンド安を予想する。
(2024/11/13、 小池正一郎)
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