9月25日の「為替大観」は、筆者都合により休載とさせていただきます。
久しぶりに、FRBの金融政策で盛り上がっている。ただ、これまでとは様相が違う。「下げるか?下げないか?」でなく「下げ幅はいくらか?」という点だ。日本時間で明日19日未明に、米政策金利の引き下げ幅が判明する。そこで、問題1は「引き下げ幅はいくらか?」である。
筆者が参考にしている指標は、シカゴ先物市場で取引されるオーバーナイト金利をベースにCME(シカゴ商品取引所)が計算するフェドウォッチである。頻繁にアップデイトしているので、市場はこんな風に予想しているんだ、予想が変わってきた、と最新のコンセンサスを知るために大変に役立っている。過去1週間の推移を見ると、今週に入って金利別の確率推移は大きく変動したとわかる。
今日現在(NY2024/9/18 2:30am)CMEのフェドウォッチによれば、今年残り3回のFOMCにおける金利別変更確率(現在5.25-5.50%に比べてどのように変わるかの確率)は下記の通りである。([日付]はFOMC政策決定日)
1)[9/18] 9/18 9/17 9/13 9/12 9/6
5.00-5.25 37% 39% 57% 72% 70%
4.75-5.00 63% 61% 43% 28% 30%
2)[11/7] 9/18 9/17 9/13 9/12 9/6
4.75-5.00 21% 21% 24% 34% 29%
4.50-4.75 51% 51% 51% 51% 53%
4.25-4.50 28% 28% 25% 15% 18%
3)[12/18] 9/18 9/17 9/13 9/12 9/6
4.50-4.75 9% 8% 9% 15% 9%
4.25-4.50 34% 33% 35% 42% 36%
4.00-4.25 41% 42% 41% 35% 43%
3.75-4.00 16% 17% 15% 8% 12%
先週(9/13)までの市場のコンセンサスは、「9/18の引き下げ予想幅は0.25%が優勢」であった。しかし今週に入って予想確率が逆転「0.50%引き下げ(4.75-5.00%へ)」が優勢となった。表にはないが0.75%と言う大胆な説も聞こえてきた。今では「0.50%引き下げがコンセンサス」と言ってもよい空気になった。小売売上高(9/17発表)が+0.1%(前月比)と予想(-0.2%)より大きく、消費は底堅く景気後退懸念は後退してきたとの見方があっても、0.50%の確率は上昇している。0.50%引き下げ予想が高まっている証左である。参考までに11月までの引き下げ幅として0.75%(0.50+0.25)の確率が51%となっていることにも注目したい。
この背景として、著名な投資家、フェドウォッチャーの言葉が市場へ大きなインパクトを与えていると理解できる。具体的には、前NY連銀総裁ダドリー氏や、筆者も何回も会っているが、ウォール街で最も注目されているエコノミストの一人であるISIのエド・ハイマン氏らの0.50%引き下げ見通しに対する積極的な発言があり、市場の空気を変えている。また、マスコミ界からは、WSJのティミラオス記者は時には断定的な記事を書くので要注意である。
そして問題2は「ドル円相場(現在141.70円)には、どのくらい織り込まれていると考えるか」である。発表まで数時間余り、考える余地はないかもしれないが、筆者はまだ織り込んでいない、と考えている。今回のドル安は、米金利の行き過ぎ感があるからである。米10年債の利回りは、3.599%(9/17最安値)と、昨年6月以来の低水準まで低下した。ちなみに同時期(2023年6月)のドル円安値は138.43円であった。
さて、今後1週間の相場見通しであるが、日銀金融政策決定会合は現状維持を想定しており、米国の政策金利下げでも日米長期金利差は大きく変化はしない(米金利低下はすでに織り込んでいる)ことから、ドル円は、短期的には139.00-144.00円と先週と変わらずと予想する。一方欧州通貨は、ECBの利下げは予想通り(預金ファシリティが0.25%の利下げ、メインリファイナンスと貸付ファシリティが0.60%利下げ)だったが、ユーロドル相場も予想通り底堅く推移した。今週は対ドルは1.1050-1.1250を、また対円では156.00-160.00円と小幅ユーロ高を予想する。そして英ポンドドルは、先週と同じ1.3000-1.3300と予想する。
(2024/9/18、 小池正一郎)