先週のドル/円の週足ロウソクは一目均衡表の週足「雲」を終値で上抜け、一方でユーロ/ドルの週足ロウソクは終値で週足「雲」を下抜ける動きとなった。
なおも「ドル1強」の状態が続いているということになるが、ユーロ/円やポンド/円などクロス円全般も強含みで推移したところからすると、同時に円安傾向も依然として根強い状態が続いているということになる。
ドル高の背景には、一つに米10年債利回りの上昇があり、先週は週末にかけて一時的にも4.26%程度まで上昇する場面も垣間見られている。その最大の要因は、11月5日に迫る米大統領選でトランプ前大統領が優勢との思惑が広がったことで、そこには米大統領選後の物価上昇に対する警戒がある。
加えて、米大統領選後の米政府債務膨張に伴う米財政悪化懸念も台頭しており、事前に米国債を手放しておこうとする動きが“悪い金利上昇”につながっているといった側面もある。むろん、インフレとポピュリズムのリスクが台頭しやすくなるという意味では、程度の差はあれ、結果的にハリス氏が勝利した場合も同様であろう。
これは、長い目で見ると米国経済に深刻な悪影響をもたらしかねず、本来は必ずしもドル買い材料とは言えないものであると思われる。その証拠にと言うべきか、このところ市場では金(ゴールド)への投資拡大が続いている。これは、明らかにインフレとポピュリズムに対するヘッジ手段が講じられていると捉えることができる。
一方、足元の円安の背景には、一つに昨日(27日)投開票が行われた衆院選で事前に自民・公明与党の議席数が過半数割れに陥る可能性と、場合によっては政局の流動化が暫く続くとの懸念が強まったことがあった。そこには、国内政治が混迷の度合いを一層色濃くすれば、その分、日銀は追加利上げに踏み切りにくくなるという読みがある。
結局、与党は過半数割れとなり、自民党は政治資金問題で非公認になった無所属候補を追加公認しても過半数に届かないという事態に。今回の選挙で大躍進を遂げた国民民主党の玉木代表は、自公と連立を組む可能性については否定しており、政策や予算案によって政権に協力する方向であることを示している。
当然、暫くは政局が混乱を余儀なくされ、先行き不透明な状態が続く。週明けのオセアニア市場は円売り優勢の展開で、ドル/円は再び153円台を試す動きを見せている。
ドル/円が153円台をうかがう事態となってきているからには、さすがに本邦当局が徐々に焦りを滲ませてくる可能性も大いにあろう。言うまでもなく、円安を放置し続ければ一段の物価上昇に伴う国民世論の政権批判が一段と強まりかねない。よって、むしろ「追加利上げで円安進行に歯止めをかける」という選択をした方が国民からの支持が高まる可能性もあるのではないか。
衆院選前の調査によると、日銀ウォッチャーの過半は追加利上げの時期を「12月」と予想しており、遅くとも来年1月までに実施されると見る向きは大半を占めるという。よって、今後は少し長い目で徐々に円を買い戻す動きが出てもおかしくはない。
10月に入ってからは、シカゴIMM通貨先物市場における投機の円売り戻しが活発化していたが、そろそろ一巡する可能性も十分にあると見られる。ドル/円の200日移動平均線は現在151.42円処に位置しているが、同線を明確に下抜けてくると上昇一服との感が一気に強まりやすくなってくると見ておきたい。
もちろん、今週の日銀金融政策決定会合の結果と総裁会見、10月の米雇用統計など発表が相次ぐ各米指標、それに米大統領選の結果と市場の反応を確認するまでは、まだ気の抜けない状態が続く。当面、軟調な展開が続く可能性のある日本株の動きも横睨みしながら、慎重に市場と向き合いたい。
(10/28 08:00)
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