先週は、週を通じてドル売りの流れが強まった。感謝祭に向けたドルロングの調整が一因となったことに加えて、先々週の週末22日まで4.4%台にあった米10年債利回りが、先週末29日までに4.1%台まで目立って下落したことも大きく影響したと考えられる。米債利回りの低下は、月末の機関投資家による債券買いが入ったことにも因る。また、米連邦準備制度理事会(FRB)が12月に追加利下げの実施を決定するとの観測があらためて強まったこととも無縁ではない。
結果、ドルは対ユーロや対ポンドでも値下がりしたが、とくに対円での値下がり方が大きく出た。むろん、それはドル安の要因に加えて円高の要因が関わったためである。
前回更新分の本欄では、ドル/円について「一目均衡表の週足『雲』上限を下抜けるかどうかに注目し、下抜けた場合は62週移動平均線(62週線)を試すかどうかを確認したい」と述べた。実際、27日に大きく値下がりした場面では週足「雲」上限を下抜けたものの、62週線が位置するところで一旦は下げ止まって翌28日には反発。しかし、結局のところ週末29日には62週線をも下抜ける動きとなった。
29日にドル/円が再び下げ基調を強めたのは、一つに同日の早朝(日本時間)に発表された11月の東京都区部の消費者物価指数(CPI)の前年同月比伸び率が市場予想を上回り、3カ月ぶりに伸びが拡大したことが大きかったと言える。
市場では「この結果が12月の日銀会合での追加利上げを後押しする」と捉えられ、そうでなくとも感謝祭前後で取引の流動性が低下しているなか、スルスルと円高方向に振れたことがドル/円を150円割れの水準まで下落させたと見られる。
後にドル/円は一旦150円台半ばの水準まで値を戻したが、日本時間の30日午前2時ごろからは再び大きく値を下げる格好となった。周知のとおり、それは日経電子版が植田和男日銀総裁のインタビュー記事を“特報”したことが大きく関わっている。
総裁は、追加利上げの時期について「データがオントラック(想定通り)に推移しているという意味では近づいている」と述べ、さらに一段の円安はリスクが大きいとの認識をも示した。結果、日本では多くの人々が寝静まっている時間帯にも拘わらず、ドル/円は大よそ1円も円高方向に再び触れることとなった。まさに、今回の総裁インタビューは相場にとって“激震”を生ぜしめるインパクトとなったのである。
思えば、ほんの1週間前までは「米国の追加利下げも日本の追加利上げも可能性としては5分5分」と見る向きが大勢を占めていた。それが、いまでは米国の利下げも日本の利上げも、その確率がともに過半を超える状況に変わってきている。米国では感謝祭休暇をとっている市場関係者が多いなかでの出来事であっただけに、週明け以降も暫くは“余震”が続くこととなろう。
まずは、週明けの日本国債市場で10年物利回りが日銀総裁発言に対してどのような反応を示すかを見定める必要があろう。また、ドル/円については、ひとまず週足「雲」下限の水準(現在は148.72円処)が下値サポートとして機能するかどうかを見定めたい。仮に下抜けた場合には、9月16日安値から11月15日高値までの上昇に対する半値(50%)押しの水準=148.17円処を試す可能性もあると認識しておきたい。
むろん「ドル安の流れ自体が継続するか」についてもユーロ/ドルの動きを見ながら判断して行くことが重要となる。29日は節目の1.06ドル処にあと一歩という水準までの戻りに留まったが、果たして同水準が当面の上値の抵抗となるかどうか。
欧州中央銀行(ECB)による12月追加利下げの可能性も十分にあり、ユーロ自体の強気材料は限られる。また、今週6日に発表される11月の米雇用統計はハリケーンの影響を受けた前月の反動で大幅増となる公算が大きい。
(12/2 07:00)
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