先週24日、日銀が追加利上げ実施の決定を下した。利上げ自体は事前に織り込まれていたが、公表された経済・物価情勢の展望(展望レポート)で25年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く、CPI)上昇率の見通しが2.4%と、昨年10月の見通しから0.5%ポイントも上方修正されたことは相応にインパクト大であった。
また、日銀声明のなかで追加利上げの可能性が示唆されたこともあり、その後に控えていた植田日銀総裁会見の内容に対する警戒感が強まり、会見前にはドル/円が一旦155円処を試す動きも見られた。もっとも、総裁は会見で「基調的な物価上昇率は見通しに沿って緩やかに上昇する範囲にとどまっている」などと述べ、市場からは「日銀は利上げを急いでいるわけではない」といった声も聞かれた。結果、そこから大きく円高方向に振れるということはなかった。
ただ、今回の会見では「過去と比べると為替変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある」など、円安と輸入物価上昇の関係性に対する言及が目立ったことも事実である。こうした発言の内容が今後、さらなる円安の進行に一定程度のブレーキをかける役割を果たすとの感触も得られたように思われる。
とはいえ、24日の欧米時間入り後はドル/円がやや急ピッチで値を戻し、一時的にも156円台半ばの水準まで上昇する場面も見られた。この時点で、日銀による追加利上げの実施決定や物価見通しの上方修正に伴う円買いの動きはすっかり巻き戻される格好となり、再び市場の関心は米トランプ政権の政策の行方に向かう。
24日のロンドン時間入り後、米10年債利回りが一時4.66%まで上昇する動きとなったことがドル/円の値動きにも影響した格好であるが、その背景にはトランプ関税など貿易政策に関わる不確実性が依然として強いことがあると見られる。先に、カナダやメキシコに対する関税強化の方針を掲げたかと思えば、先週末にかけては「どちらかと言えば中国に対して関税を使わずに済むのが望ましい」などと発言するなど、市場にしてみれば先行き不透明なことこの上ない状態が続いている。
トランプ米大統領就任後の米株価の推移などからすれば「同氏の言動は今のところ金融市場に目立った悪影響を及ぼしていない」ということになるのかも知れないが、まだ暫くは慎重に行方を見守りたいと考える向きも市場には多いだろう。
むろん、今週行われる米連邦公開市場委員会(FOMC)においても追加利下げに対する慎重な姿勢があらためて示される公算が大きい。
なにしろ、トランプ氏はカナダとメキシコに対する最大25%の関税賦課を検討することについて「2月1日までに」としているのである。その計画が予定通りに進むのか、今週末まで見定めないことには米金融政策の方向性も定めようがない。世界保健機関(WHO)からの脱退については「資金拠出が減額されれば再加盟する可能性も」と言いはじめるなど、幾つかの政策方針については軌道修正や方針撤回の可能性も大いにある。
少なくとも、12月分の米個人消費支出(PCE)物価指数の発表はFOMC通過後(31日)になる。今月14日、15日に発表された12月の米生産者物価指数(PPI)や米消費者物価指数(CPI)の結果がやや弱めであったことは記憶に新しく、今回のPCEについても事前の予想を下回る可能性は十分にあると見ておきたい。
また、今週31日は全国の物価の先行指標となる1月の東京都区部消費者物価指数(CPI)の発表も控えている。正直、生活実感として弱めの結果は見込みにくい。
これら、日・米の重要な指標結果を受け、果たして今週末時点のドル/円は1月半ば以降に下値を支えている155円処の水準を維持することができるだろうか。一方で、目先的な上値の目安は156円台半ばの水準と見ることができ、今週はおおよそ154.80-156.80円のレンジ内での動きを基本として、上下に放れる果報性があるかどうかを判断する週になると考えておきたい。
(01/27 07:00)
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