先週6日の東京時間から一気にヒートアップした所謂「トランプ・トレード」は、週末にかけて巻き戻しの動きがやや強まる格好となった。まあ、少し落ち着こうというわけである。既知のとおり、ドル/円は7日に一時154円台後半の水準まで上値を試しに行ったものの、週末8日のNY時間には一時152円台前半の水準まで大きく調整する場面も見られた。154円台後半まで値を上げた場面では、さすがに「やりすぎ」との批判も市場から聞かれ、あまりに期待先行が過ぎるとの印象であったことも否めない。
6日に一時4.48%近辺まで上昇した米10年債利回りも8日には一時4.26%台まで低下する場面があり、週末に向けたポジション調整の動きも手伝って、市場は徐々に冷静さを取り戻すこととなった。まして、週明け11日はベテランズデーの祝日で米債券市場は休場となる。むろん、トランプ次期米大統領が実際にどのような政策を導入して行くかについては、いまだ不確実性がかなり高いわけで、当面は徐々に明らかとなる米新政権の人事の行方に市場は注視していくこととなろう。
ユーロ/ドルの値動きに関しても、6日のNY時間に一時1.0682ドル台まで一気に値を下げた場面は、やはり「少々やりすぎ」との感があった。実際、8日には一旦買い戻され、一時的にも1.08ドル台まで値を戻す場面が垣間見られている。
もちろん、トランプ氏が掲げる関税強化が欧州経済にとってかなりのダメージとなり得ることは否定できない。JETROのデータによると、2023年の対米輸出額はEU(欧州連合)が5763億ドルと地域別では最大。なかでも、ドイツは1592億ドルと日本の1472億ドルを上回る。ちなみに、国別ではメキシコの4752億ドルが最大で、次に中国の4268億ドルが目立っている。とまれ、そうでなくとも足元の景気が低迷しているドイツをはじめとするユーロ圏の国々にとって関税強化は「泣きっ面に蜂」ということになりかねない。
さらに、先週はドイツから「ショルツ首相率いる与党連合が崩壊した」とのニュースが飛び込んできた。その結果、来年9月に予定されていた連邦議会選挙が前倒しで実施される公算が大きくなっている。これまでショルツ氏は来年3月に総選挙実施を目指す方針を明らかにしていたが、ここにきて1月の実施を求める圧力が強まっており、同氏も早期実施について話し合う用意があるとしている。
どのみち、当面は独政府の不安定化が危惧される状態に陥り、市場ではユーロの上値を買って行くことに慎重さが求められることとなる。その実、先週末にかけてユーロ/ドルは再び弱含みの展開となり、一時的にも1.07ドル処を割り込む場面も見られている。
よって、当面のユーロ/ドルについては戻り売りが基本になると考えられ、あらためて1.07ドル処をクリアに下抜けた場合には、6月安値の1.0666ドル処や4月安値の1.0601ドル処を試す動きになる可能性もあると思われる。
なお、当面のドル/円については自ずと上値が限られてくるものと見ておきたい。一つに、日本の10年物国債利回りが1.0%を超えてきているという事実はやはり見逃せない。先の衆院選後に国内の政局は流動化しており、少数与党となった自公連立政権は、もはや国民民主党が掲げる財政拡張的な政策に一定程度、譲歩の姿勢を示さざるを得ない状況に陥っている。当面の政策構想が具体的に打ち出されるのはまだ少し先となろうが、相前後して市場で国債増発の警戒感が強まることは必至であり、今後、日本の長期金利も着実に強含みの動きとなって行く公算が大きい。
日銀の植田総裁は、前回の政策会合後の会見で「時間的余裕という表現は不要になると考えた」とすました顔で説明している。今後、市場では追加利上げは「12月」との見方が強まりかねないと心得ておきたい。
(11/11 07:00)
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