今週は、一つに植田日銀総裁の発言に対する注目度が高い。総裁は、本日(18日)の金融経済懇談会に出席するうえ、21日にはパリ・ユーロプラス主催の「ファイナンシャル・フォーラム」にも出席し、講演する予定となっている。
折しも、先週はドル/円が一時的にも156.75円処まで上昇する場面があり、一段の円安進行に歯止めをかけるべく「政府・日銀による強い円安けん制の動きが見られるのでは」との憶測も市場には漂っていた。しかし、これまでのところ当局によるけん制のトーンは弱いままで、現在の加藤(財務相)・三村(財務官)コンビになって以降、以前の鈴木・神田コンビのときのように執拗なけん制姿勢を露わにするケースは明らかに減っている。一部からは「けん制効果を高めるため、あえてそうしている」との声も聞かれるなか、今週の日銀総裁発言に市場が関心を強めるのは道理と言える。
そうでなくとも、足元ではドル1強の流れに対する支援材料が多い。先週14日には米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長による「利下げを急ぐ必要はない」との発言が伝わり、市場では12月米利下げの確率が低下。あらためてドル高の反応が強まった。
もちろん、トランプ次期米大統領が打ち出す減税や関税引き上げなどの政策が米国のインフレ圧力を強めるとの見方は根強い。目玉の一つである法人税率の引き下げが米製造業に大きな恩恵をもたらし、米雇用や賃金、米消費などに対してプラスに作用すると見る向きも少なくはない。そもそも、トランプ氏が強弁する関税の強化方針は、それ自体がインフレ圧力を高める。少し長い目で、FRBが利下げに慎重になるのも無理はない。
そうした状況下で、米10年債利回りは高止まりしており、先週15日には一時4.5%を超える場面もあった。ただ、これはトランプ次期政権下で確実に財政赤字が拡大し、米政府債務が一段と膨張することに対する警戒から生じている現象で、いわゆる“悪い金利上昇”の側面が強いと見ていいだろう。
それでも、米金利の高止まり状態に乗じて(米金利上昇を口実に)ドルの上値を買っていく足元の流れは、多分に投機の色合いが濃い。そうであるとするならば、きっかけ一つで一転ドルが売り戻されることとなるケースも想定しておかねばなるまい。
実際、15日のドル/円はNY時間入り後に大きく値を下げる展開となった。これは一つに、週末のポジション調整に伴う売りによると見られる。
むろん、同日は米株式市場で主要3指数が揃って大幅な下げを演じたこともドル売り・円買い材料として作用した模様。一部からは、市場がトランプトレードの正当性をあらためて評価しようと慎重になっているとの声も聞かれ、相対的にリスク志向の低い向きが米国のMMF(マネー・マーケット・ファンド)に資金を振り向けていることも事実である。
また、15日はシカゴ連銀総裁やボストン連銀総裁らの発言から、12月米利下げの選択肢が消えたわけではないとのムードも漂った。
だからこそ、余計に今週の日銀総裁発言は注目度が高い。15日に内閣府が発表した7-9月期の国内総生産(GDP)速報値が2期連続のプラスとなったことも、12月の日銀利上げ観測を高めている。足元では日本の10年物国債利回りが1.07%台まで上昇してきている。こうした状況が、日銀にじわじわと政策の見直しを迫る。
ひとまずは、先週末のドル/円の下落が単なる週末特有のものに過ぎなかったのかどうかを確認したい。また、日銀総裁発言などでドル/円が弱含みとなった場合は、21日移動平均線、200日移動平均線、一目均衡表の週足「雲」上限などの節目が下値を支えるかどうかに要注目である。
(11/18 07:00)
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