ドル/円は、先週末13日まで5日続伸。日銀が今週の金融政策決定会合で利上げを見送るとの観測が強まっていることが何より大きい。
先週は、まず9日の東京時間に日銀が「来年1月の決定会合前に氷見野副総裁が懇談会で講演する予定」を発表し、市場は「1月の決定会合前に政策委員が懇談会を開くのは異例」として1月利上げ観測を強めた。また、翌10日の日本経済新聞(朝刊)の紙面上には「日銀利上げ『1月論』じわり」との見出しも踊った。
さらに、11日のロンドン時間には米大手総合情報サービス会社、ブルームバーグが複数の関係者の話として「日銀は追加利上げを急ぐ状況にはないと認識している」などと報じ、ドル/円は一気に152円台へと押し上げられた。
加えて、週末13日には共同通信が「日銀は利上げの見送りを検討している」などと報じ、一時的にもドル/円が153.80円処まで上値を追う場面も垣間見られている。
こうしたことから、金融市場では日銀の追加利上げ観測が急速に後退。1週間ほど前まで60%超であった利上げ確率は、先週末にかけて16%程度まで低下したという。
少し振り返ると、11月30日の午前2時ごろに日経電子版が植田日銀総裁のインタビュー記事を“特報”し、それを受けた市場ではドル/円が大きく下落するという一幕があった。総裁は、追加利上げの時期について「データが想定通りに推移しているという意味では近づいている」と述べ、さらに一段の円安はリスクが大きいとの認識をも示したのである。果たして、これは市場へのメッセージだったといえるのだろうか。
その意味からすると、本来、13日に発表された12月の全国企業短期経済観測調査(短観)において大企業製造業の景況感が2四半期ぶりに改善したというデータは、投資家に円売りを躊躇させるものとして認識されそうなものである。しかし、市場は「24年度の全規模全産業の設備投資計画は前年度比9.7%増となる見通しで、前回の8.9%から上方修正された」というデータにさえ全く反応しなかった。
ブルームバーグが取材した“複数の関係者”の見立てに「どの程度の信ぴょう性があるのか」は与り知らず。ただ、市場に「日銀が市場と“対話”する能力は絶望的」との認識が広まっている状況下にあって、一部から「1月の利上げも怪しい」との声まで聞こえてきていることも事実である。
加えて、目下の市場では米連邦準備制度理事会(FRB)が年明け以降、利下げペースを減速させるとの見方も日増しに強まっている。もはや、今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)における追加利下げは完全に織り込み済みとなっており、むしろ投資家の関心は「1月のFOMCで利下げが一旦停止されるか否か」に向かっている。
実際、13日の米10年債利回りは一時4.4%台に乗せる動きを見せ、債券価格は5日続落。週間ベースの下落幅としては、ここ2カ月で最大となった。12月のミシガン大学消費者信頼感指数が4月以来で最高となったことや、11月の米消費者物価指数(CPI)の結果において食品・エネルギーを除くコア指数が前年比3.3%の上昇と高めの結果になったことなどを考えれば、FRBのボウマン理事が「インフレのリスクは依然として顕著」と述べていることにも納得が行く。まして、来年1月にトランプ氏がいよいよ次期米政権を発足させる運びとなれば一層、米インフレ率は上昇傾向を強めると見られる。
先週末にかけてドル/円は200日移動平均線(200日線)、21日移動平均線を順に上抜き、11月15日高値から12月3日安値までの下げに対する61.8%戻しの水準(153.65円処)に到達した。仮に同水準を難なく上抜けるようであれば、次に78.6%戻しの155円処が意識されやすくなると見られる。もし、日銀が追加利上げに踏み切れば、それは一種のサプライズとなるが、ひとまずは200日線が下値の目安になるものと見ておきたい。
(12/16 07:00)
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