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市場養生訓

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第728回

2018年07月17日

 ロシアのプーチン大統領と米国のトランプ大統領とのヘルシンキの会談では、米国の経済制裁の話が出たことだろうが、ロシアの大統領が弱音を吐いて譲歩の糸口を与えることはなかったと想像する。

 ルーブルの動き(対米ドル)から見る限り、2016年の初めまで下落基調を強めたが、その後は比較的安定している。今年4月に急落したのは米国金利の上昇を主因とする新興国全般の下落基調に合わせたもので、長期間にわたるロシアに対する経済制裁の効果ではない。

 それどころかロシアは米国の最大の武器であるドルの力を削ぐための試みを続けている。国際取引での非ドル通貨建て取引の促進、人民元建ての原油先物取引市場の支援、トランプ大統領との会談の前には、国内大手銀行のトップから預金や貸し出しなどでのドル利用の著しい低下の報告を受けている。

 国際金融における基軸通貨としてのドルの地位は圧倒的で簡単には崩れないが、米国はドルを武器に使えば使うほど、長期的にはドル離れを促す力を醸成するというパラドックスがある。

 基軸通貨は必然的に安全通貨/避難通貨の面を持つ。有事のドル買いだ。米国が仕掛けた貿易戦争が進む中で最近ドル高が進んでいるが、米国債も買われているので安全資産へのシフトと解釈できる。

 だが本当のところはドルの実需の変化が引き金となって形成された相場だろう。米国へのリパトリ資金などドル買いの増加だ。

 市場は取引の9割以上を占める投機為替が、金利や貿易などの為替変動要因を指標に動くときが多いが、時には1割にも満たない実需為替が先導する場合がある。通常の為替変動要因の有効性が不確かな時、投機為替は実需為替を指標にするからだ。

 安全通貨が買われるとすれば円やスイスフランが買われてもいいし、ドル金利が要因とすれば、長期金利が安定して、イールドカーブンフラット化が進むのは整合性がない。貿易戦争も米国の貿易赤字の削減が進むのか、進むとしてもどれほど進むのか、については不確かだ。それに為替レートとの関係についてはもっと不確かだ。貿易赤字の削減は為替需給の点からは結果としてドル高だが、それを実現するためにはドル安が必要だ。

 いずれにせよ実需為替が影響力を持つときに市場を通常の為替変動要因で考えても無理がある。ただ実需為替の影響は長くは続かず、いつの間にか通常の為替変動要因がとって代わるが普通だ。


※当コラムは毎週火曜日の更新です(火曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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