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第383回 ~コロナが変えた常識~

2020年05月13日

この3週間は、統計の無機質さを感じた週となった。休載前のタイトルが「見たこともない相場」だったが、確かにその通りであった。ただ「見たこともない」の意味が、筆者の予想とは全く異なったものであった。その言葉を選んだときは、「経済指標が異常な数字であれば、金融市場もそれに合わせて特異な相場展開になる」と言うことを予想したものだった。

しかし、結果としては、指標は異常であったが、相場はその大きさに関係なく、まるでそれが日常であるかのような落ち着いた値動きであった。「見たこともない」の意味が、変動要因の大きさに関係なく、予想以上に相場が平穏であったという意味になり、この点は今後の相場変動を考えるうえで、新しい時代に入ったことを認識させられたことである。

その背景となるエピソードである。それは米雇用統計に伴う値動きだ。まず失業率。4月は14.7%と、前月の4.4%から10.3%と戦後最大で急激は悪化となった。歴史的にも、1929年の米大恐慌時代の高水準に次いでの数字である。歴史上、最大な失業率は25.5%、大恐慌が起こって3年目の1932年8月に記録された。

また非農業部門雇用者数は、2,050万人の減少!(前月は-87万人、-70.1万人から改訂)。過去10年間の増加人数が一か月で吹っ飛んだという驚異的な激減となった。数字だけで判断すれば、少なくとも5円くらいドル安になってもいいほどのショックな数字であった。

しかし結果は、むしろドルは上昇、理由は、予想より減少幅が少ないから、と「相場は予想との比較で動く」を地でいったようなものとなった。数字が激減することはすでに市場では織り込み済みと言われた。その要因は、毎週木曜日に発表される失業保険新規申請者数(通称:イニシャルクレーム)であった。3月21日に、それまで、概ね20万人程度であったのが、一気に330万人と急増。そこから最新数字316.9万人(5/2までの1週間)まで7週間合計で3,348万人の新規申請を記録した。今や雇用動向は、月一回の雇用統計でなく、週一回のイニシャルクレイムが重要指標となったと言える。すなわち雇用統計は過去の数字!との格下げになったのである。

米国景気の急激な悪化は、すでにGDP成長率(2020第1四半期:速報値マイナス4.8%)、ISM景況感指数(製造業:49.1から41.5へ、非製造業52.5から41.8へ)と、大幅な後退が明らかになっているが、今週発表になる小売売上(予想:前月比マイナス11%)、鉱工業生産(同:マイナス11.5%)も、大幅な落ち込み予想となっている。

これらの点から、もはや過去の数字との連続性がなくなっている、新たなスタートラインに立ったと考えていいだろう。これは株式相場との関係でも同じである。失業率とS&P500と相関グラフを見るとはっきりするが、失業率の改善に連れて、株価が上昇していたが、今月は、その線が、離れ小島のように突然と枠をはみ出た。過去の統計は役に立たないとは言いたくないが、参考にするには根拠が見えない時代になった。

ところで今年のドル円は、実はとても小動きである。今日までの年間変動幅は、昨年より広い11.05円(101.18円~112.23円)だが、月ベースで寄り付きと終わり値で比較すると、まるで行って来いだ。1月から4月まで、33銭、44銭、21銭、23銭であり、今月も寄付きが107.28円だったので、今現在わずか20銭余りの幅である。傾向的には、3月を除き、いずれも陰線であり、わずかづつだが、円高が進んでいることが、筆者は気になる。

今後1週間は、ドル円は、106.50~108.50円。またユーロは、対ドルでは、1.0750~1.0950、対円では115.00~117.00円、英ポンド/ドルは、1.2100-1.2300と予想している。

(2020/5/13, 小池正一郎)

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・SBI新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。


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