6月は中央銀行の政策決定会合が続く節目の月となるが、波乱含みの幕開けとなった。さっそく、初日に米国から、変化を予兆させるデータ(ISM製造業景況感指数)が発表になった。一言でいえば「数字が悪い! ショックだ!!」。
結果は48.7。2ヶ月続いて好不況の分かれ目である50を下回り、予想(49.5)にも届かなかった。これで過去21ヶ月のうち19ヶ月も50以下、過去3ヶ月でも50.3(3月)、49.2(4月)と連続低下、3ヶ月ぶりの低水準となった。内容を見ても、新規受注が4月の49.1から45.4に大きく低下、受注残も下がっている。消費者信頼感や住宅販売など他の景気指標も低下傾向にあり、今月もずるずると景気後退を示す指標が続くという嫌な予感が浮上。連れてFRBの利下げが早まるのではないかとの不安感が市場に広がり、ドル売りに結びついているとの見方だ。
為替相場に目を転じると、ドル売りが先行、ドル円は2日間で約3円も下落、約2週間ぶりのドル安・円高に動いた。先週のドル高予想に対しては逆の展開となったが、果たしてこれは何を意味するか。5月の振り返りから、今後の相場予想を考えてみたい。
まず5月の為替概況だが、一言でいえば「円安・ドル安」であった。ドル円は4月29日に160.20 円を付けた後、日本政府による複数回のドル売り介入により、151.86円まで下落した(5月3日)。円は急速に強くなったが、冷静に考えれば、ファンダメンタルズ(経済基礎条件)や日米金利差が大きく変動したわけでなく、その後5月29日迄じりじりと円は売られ、157.71円まで円安が進展した。その分だけ欧州通貨などが強くなり、結果としてクロス円を中心とした円の独歩安が再燃した。特にポンド円は200.75円と4月29日に付けた2008年8月以来のポンド高円安を更新し、ユーロ円、豪ドル円も高値更新に迫る勢いとなった。日本の10年債金利が1.103%と12年10ヶ月ぶりの高値になっても、金利差縮小を見越した円買いが続かないところに、円の弱さ、日本の成長力の弱さが表れているのだろう。
一方で米ドルインデックス(DX)を見ると、5月1日の106.490をピークに右肩下がりに下落、6月4日には103.993と、4月9日以来の安値と付けた。ドル全体の弱さも浮き出ている。このドル安の主な要因は、先に述べた様に米国景気後退予想とFRB利下げ前倒しへの警戒感である。
さて、ドル円は現在156.08円(執筆時点19:20)だが、この近辺にはチャート的に極めて重要な相場が集まっている。しばらく155.80-156.20でもみ合いを続け、時が来れば、どちらかの方向にブレークしていくと予想している。なぜなら今の156円近辺は、チャート上節目となるポイントが集中しているからである。まず短期(21日)の移動平均線が156.20円、しかもドル円の高値160.20円とその後の安値151.86円の半値が156.03円、直近(5/29-6/4)の高値(157.71円)と安値(154.53円)の半値が156.12円となっている。加えて専門的ではあるが、一目均衡表では、先行線が156.19円。転換線が156.13円(いずれも6/4現在)と多くの相場が156.00-20円に集中している。今日のこれまでの高値156.30円が、おのずと抵抗線になっているような気がする。
さて、今日のカナダ中銀の決定会合から明日はECBが、来週にはFRB、日銀と続く。中央銀行の最も嫌う(と、筆者は認識しているが)「ビハインド・マーケット(市場の後追い)」から、一気に「アヘッド・オブ・マーケット(市場を先行する政策運営)」に転じるか、特に今日のカナダ中銀の動向が注目される。もし利下げとなれば、他の中央銀行も雪崩的に利下げを打ち出してくる可能性もある。今週末は米国の雇用統計も控えている。ヘッドライン(非農業部門雇用者数、失業率)の予想は19万人(先月17.5万人)、3.9%(先月と同じ)である。
さて、今後1週間の相場見通しであるが、ドル円155.00-157.50円の間でドル弱含みと予想する。ユーロドルは、ECBの利下げを予想するが1.0700-1.0900と先週と同じ、対円では167.50-170.50円と先週よりユーロ安と予想する。そして英ポンドドルは1.2650-1.2850と先週とほぼ同じと予想する。
(2024/6/5、 小池正一郎)