今日は野球で言えば一日2試合、いわゆるダブルヘッダーの日だ。日本時間では今晩と明朝と日をまたぐが、お膝元の米国では重要イベントが朝と午後に二つある。まず午前8時半(NY時間、以下同じ)にCPI(消費者物価指数)が発表になる。そして午後2時にFOMCの結果が明らかになり、2時半からのパウエル議長記者会見へと続く。
結果次第では“午前と午後で市場の方向性が全く逆になる(引き分け)”か、あるいは“午前の流れが午後に加速する(ダブルパンチ)”か、どちらになるか構えている。しかし第3のケースとして“何もおこらず、肩透かし(大山鳴動してネズミ一匹)”もあるかもしれない。(ただ個人的には、この第3のケースの確率は限りなく小さい、と考えているが…)
とここまでは、一日が切れ目なく続いているとの前提での見方を述べた。しかし実際に取引をしている当事者としては、一つ一つが勝負である。イベント自体は個別であり、それぞれ個別に対応する姿勢で市場に立ち向かっていくことが求められる、と言うのが筆者の考えである。
そこでまずCPIを考えてみたい。根底にあるのは「ゆっくりではあるが、着実に低下している。ただ(FRBが考える)見通しより低下スピードや項目が一様ではない。目標のインフレターゲット2%達成の実現性が明確に見えない」ことであろう。
今月のヘッドライン数値の市場予想(カッコ内は前月実績)は、下記のとおりである
前月比 前年比
総合 +0.1%(+0.3%) +3.4%(+3.4%)
コア +0.3%(+0.3%) +3.5%(+3.6%)
問題は、FRBが注目している家賃等の住宅関係費用の動向である。8時半(日本時間、本日21時30分)に、米国労働省から項目別の変動率が瞬時に発表になる。筆者はそこで、まずこれら住宅関係費用の項目を比較する。例えば4月分賃料は直近3ヶ月の上昇幅が年率5.3%とヘッドラインの数字よりはるかに高い。ここが下がらないと、FRBとしても安易に利下げとはいかないのだろうと分析している。まずは「shelter」(4月実績は前月比+0.4%、年率+5.5%)に注目したい。
次に、FOMCである。声明文は午後2時(日本時間13日3時)に、ドットチャートや経済見通しを含めて発表になる。(今は自宅にいながらにしてFRBのHPで取得できる。便利になったものだ)。今回は、米国の朝方にCPIが発表になり、FOMCでも当然その結果を踏まえての討議となろうし、結論も導かれる。FOMCメンバーが事前に知っていたとしても、8時半に初めて知ることになったとしても、同日なのでそこで結論に差が出ることはないだろうが、アジアの市場関係者にとっては、CPIの結果によってFOMCの結論も変わるかもしれないと思えば、長い夜になるだろう。
今回の注目点は、①政策金利の変更があるかないか、②ドットチャートで、今年の引き下げ回数と年末のFFターゲット金利の見通し、③経済見通しで、成長率とインフレ率の将来予想である。現在の市場予想は、①今回は現状維持、②引き下げは1回(先物市場予想での差は<わずか1ポイント以下>)で9月利下げ確率が勝っている、年末金利は5.00-5.25%の予想である。③についてFRBはPCE(個人消費支出)価格指数を採用しているが、前回(2024年3月)は、2024年から26年まで、2.6%、2.2%、2.0%(第4四半期年率比較、中間値)と低下見通しを出している。最新値(2024年4月)は2.8%と低下しているが、今回どのような評価をしてくるか興味深い。
合わせて重要な点は、声明文も含めて、その後に行われるパウエル議長の記者会見での発言である。利下げへの判断基準、2%の到達時期、またはそこに至るまでの問題点、リスクについて、どのように発言する(示唆を与える)かである。よもや「利上げの可能性も排除しない」とは言わないと思っているが、そんなことになればドルは急上昇、ドル円も160円が目前に迫る事態となろう。
さて、今後1週間の相場見通しであるが、ドル円は156.00-159.00円と広めとなるが、ドル強含みと予想する。またユーロドルはECB利下げ後に下げ幅を早めているが、その流れが続くと考えて1.0550-1.0800とユーロ安を予想、ただ対円では167.50-170.50円と先週と同じと予想する。そして英ポンドドルは1.2650-1.2850と先週とほぼ同じと予想する。
(2024/6/12、 小池正一郎)