FX・CFD・証券取引のことならマネーパートナーズ -外為を誠実に-

為替大観

最新の記事

第589回 ~歴史から学ぶ~

2024年08月07日

今年はニクソンショックから53年。うち52年間、筆者は為替市場に関わってきた。先週からの一週間(7/31-8/7)の円の急騰劇は、為替相場変動史に新たな1ページとなったと捉えている。今回は為替だけでなく、金利、株式、商品すべての市場が大変動となったことで、いわゆるインターマーケットの一体化が鮮明になったことだ。ただこの劇の幕は下りていない。

市場取引で完全にコンピューターが担ってきてから年月が経っているが、取引の為の情報処理や実行スピードは幾何学的に高速化の度合いが高まっている。その中で人間が生き残る道は何か、機械処理だけに任せてよいか、大げさなことではなく、筆者の頭の中に渦巻いている。このような変動劇を考える中で、出てきた言葉は、取引手法として、アヘッド・オブ・カーブの技を磨くことと、運用手法として分散投資の範囲種類の拡大である。

アヘッド・オブ・カーブとは、見えないカーブの先を読むことで、筆者はその一環として当コラムで継続的に相場見通しを行っている。52年の歴史の中で、予想期間の違いこそあれ、定期的に実践してきたが、当たることもあれば予想通りにいかないこともある。予想の難しさからの克服はまだできていない。例えば先週のコラムでのドル円予想(7/31からの一週間)は149.50-153.50円だった。ところが実績は141.67円(8/5)-153.89円(7/31)、なんと12.22円の変動幅(変動率は、高値から1週間で7.9%)となり、大外れであった。

まさに特別と言えば特別であったが、個人的には、忸怩たる思いである。その理由は、①市場の変化(IT全盛、高速化)は認識していたが、先読みが不足していたこと、②ポリティカルエコノミーを専門としていたにもかかわらず、海外筋が結論を急いだことを読めなかったことである。①については、投機家の特性やポジション額や利食いのタイミングを過小評価したことだ。特に市場が薄い時(早朝や日本だけが休日など)に、波状攻撃が繰り返されることで、弾(取引額)が少ロットであっても、いわゆるコスパがよくなるので、投機家は多用する傾向があることをもっと織り込むべきであった。

また②においては、経験則からくるものだが、大相場になったのは、すべて政治が火付け役であったことを重く受け取るべきであったということだ。大変動の歴史の始まりは、国際通貨制度を根本的に変え、変動相場制の始まりとなった1971年のニクソンショックだが、個人的には、まさに米国でディーリングに明け暮れていたさなかに起こった、1日で約20円(180-200円)乱高下した1978年の米国カーター大統領のドル防衛策発表、そして1985年プラザ合意(200円突破)、1987年ブラックマンデー、1994年には米国の日本企業叩きで100円を突破、1997年のアジア通貨危機、1999年のユーロ導入と続く。

そして21世紀に入り、2008年リーマンショック、2010年のギリシャショック、2016年英国のEU離脱、米トランプ大統領就任、2020年からのコロナショックを経て、2022年ロシア・ウクライナ戦争勃発が発生。今年は日米金利差の拡大で37年半ぶりの円安となったが、これは米国がドル高を引き下げることを決めたG5会議以降のドル安の時期に並んだことになる。すべて政治が為替相場を決めたと言える。

今回の円急騰劇は、日銀総裁の記者会見での追加利上げ示唆発言が尾を引いたことで始まったことだが、今日は内田副総裁の追加利上げ慎重発言が火消しになった。まさに政治家(中央銀行も含めて)の発言が相場を作る恰好な例となった。結果ドル円は147円台に上昇。今回の円急騰劇ではまだ、反転模様が始まったばかり。これで一気にドル円が上昇するとは考えにくい。

さて、今後1週間の相場見通しであるが、ドル円は来週14日の米CPIを始め米国の景気動向を背景に、144.50-148.50円と荒い展開を予想する。一方欧州通貨は、ユーロドルは1.0800-1.1100と小幅ユーロ高、対円では159.00-162.00円とユーロ安継続と予想する。そして英ポンドドルは1.2700-1.2900と小幅ポンド安と予想する。

(2024/8/7、 小池正一郎)

このページの先頭へ

このページの先頭へ

プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・SBI新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。

FX取引(外国為替証拠金取引)、商品CFD取引、証券取引、および暗号資産CFD取引(暗号資産関連店頭デリバティブ取引)に関するご注意


【パートナーズFXおよびパートナーズFXnano】
パートナーズFXおよびパートナーズFXnanoは、取引時の価格またはスワップポイントの変動、およびスワップポイントは支払いとなる場合があることにより、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。パートナーズFXおよびパートナーズFXnanoの取引に必要な証拠金は、取引の額の4%以上の額で、証拠金の約25倍までの取引が可能です。法人コースの建玉必要証拠金金額は原則、一般社団法人金融先物取引業協会が算出した通貨ペアごとの為替リスク想定比率を取引の額に乗じて得た額とします。為替リスク想定比率とは、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第31項第1号に規定される定量的計算モデルを用い算出します。但し、一般社団法人金融先物取引業協会が為替リスク想定比率を算出していない通貨ペアにつきましては、一般社団法人金融先物取引業協会と同様の算出方法にて当社が算出した為替リスク想定比率を使用しております。取引手数料は無料です。なお、外貨両替については1通貨あたり0.20円、受渡取引については1通貨あたり0.10円の手数料をいただきます。

【CFD-Metals】
CFD-Metalsは、取引時の価格またはスワップポイントの変動、およびスワップポイントは支払いとなる場合があることにより、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。CFD-Metalsの取引に必要な証拠金は、取引の額の5%以上の額で、証拠金の約20倍までの取引が可能です。

【証券】
国内上場有価証券の売買等に当たっては、最大で約定代金の2.75%の手数料(消費税込み)、最低手数料は取引形態等により異なり最大で2,750円(消費税込み)をいただきます。有価証券のお預りが無く、一定期間証券口座のご利用が無い場合等は、別紙 ①「手数料等のご案内」に記載の 証券口座維持管理手数料1,100円(消費税込み)をいただきます。国内上場有価証券等は、株式相場、金利水準、為替相場、不動産相場、商品相場等の価格の変動等および有価証券の発行者等の信用状況(財務・経営状況を含む)の悪化等それらに関する外部評価の変化等を直接の原因として損失が生ずるおそれ(元本欠損リスク)があります。

【暗号資産CFD】
暗号資産は法定通貨(本邦通貨又は外国通貨)ではなく、特定の者によりその価値を保証されているものではありません。暗号資産は、代価の弁済を受ける者の同意がある場合に限り代価の弁済に使用することができます。暗号資産CFDは、取引時の価格の変動により、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。暗号資産CFDの取引に必要な証拠金は、取引の額の50%以上の額で、証拠金の約2倍までの取引が可能です。取引にあたり、営業日をまたいで建玉を保有した場合にはレバレッジ手数料が発生します。

取引開始にあたっては契約締結前書面を熟読、ご理解いただいた上で、ご自身の判断にてお願い致します。

〈商号〉株式会社マネーパートナーズ(金融商品取引業者・商品先物取引業者)
〈金融商品取引業の登録番号〉関東財務局長(金商)第2028号
〈加入協会〉日本証券業協会 一般社団法人金融先物取引業協会 日本商品先物取引協会 一般社団法人日本暗号資産取引業協会

このページの先頭へ