次回の「為替大観」の更新は、筆者都合により8月22日(木)となります。
ニュージーランド準備銀行(中央銀行)がほぼ4年半ぶりに政策金利を引き下げた。引き下げ幅は0.25%、新しい金利は5.25%となった。2023年5月に5.50%に引き上げて以来8会合据え置きを続け、先進国の中では、最も高い政策金利となっていたが、1年3ヶ月ぶりに金利変更を行った。これで、最も高い金利は米国FRBの5.375%(5.25%-5.50%の中値)である。
今年の政策金利の利下げは3月のスイス(1.75→1.50%)に始まった。4月はなく5月のスウェーデン(4.00→3.75%)が利下げを行い、市場では今年は利下げラッシュになるとの予想が高まってきた。そして6月から主要国の利下げが本格化し、まず第一陣がカナダであった。米国の先触れとも言われているが、5日に7会合ぶりに0.25%引き下げ、翌日ECB(欧州中央銀行、4.00→3.75%)が続いたことで、世界のインフレ動向に注目が一気に集まった。なお6月にはスイスが2回目の利下げ(1.50→1.25%)を実施したが、米国は、コアインフレの高止まりや、リセッションの確率が限りなくゼロに近くなったとの見方から利下げは実施されなかった。
7月は、カナダが今年2回目の利下げ(4.75→4.50%)を行ったのみであったが、8月には英国が8会合ぶりに利下げ(5.25→5.00%)を決め、そして今日のニュージーランドの利下げ発表となった。インフレ率の低下見通しからさらに将来の追加利下げについても含みを持たせ、いよいよ利下げステージが本格化してきた。今月は、筆者が注目している国の一つである、スウェーデン(現在3.75%)が、20日に発表になるが、本番は9月の中央銀行月間である。
それまでの間、需要なイベントは来週にいわゆるジャクソンホール会議(中央銀行シンポジウム)が開催されるが、これについては、来週取り上げてみたい。その前に注目したいことは、米国の経済指標である。
今晩は米国で消費者物価(CPI)が発表になる。世界的にインフレの沈静化が進んでおり、米国は景気後退が真剣に語られている。市場予想(カッコ内は先月実績)は以下の通り。
前月比 年率
総合 +0.2% (-0.1%) +3.0% (+3.0%)
コア +0.2% (+0.1%) +3.2% (+3.3%)
前月比では上昇予想になっているが、年率ベースでは低下傾向を示している。CPIとの比較において、既にいつでも米国政策金利の利下げが可能な水準になっており、景気の後退の確率が高まってくれば、間違いなくFRBは利下げを断行するであろう。2日に発表になった弱い雇用統計で、米金利低下、ドル円急落がそのいい例である。
今晩のCPIの低下が予想通りであったとしても、現在の市場は、米景気後退の材料に対して強くドル売りに反応する地合いである。その意味で今週の米国経済指標は今月のドル相場動向に大きな影響を及ぼすと考えている。その指標と市場予想は下記の通りである
8/15 小売売上高 +0.4% (前月0.0%)
鉱工業生産 -0.3% (前月+0.6%)
ニューヨーク連銀製造業景気指標 -6.0 (前月-6.6)
フィラデルフィア連銀同指数 +5.0 (前月+13.9)
8/16 住宅着工 133.7万戸 (前月135.3万戸)
ミシガン大学消費者信頼感指数 66.9 (前月66.4)
さて、今後1週間の相場見通しであるが、ドル円は145.50-148.50円とドル軟調を予想する。一方欧州通貨は、ユーロドルは1.0850-1.1150と小幅ユーロ高、対円では159.50-162.50円と予想する。そして英ポンドドルは1.2750-1.2950と小幅ポンド高と予想する。
(2024/8/14、 小池正一郎)