FX・CFD・証券取引のことならマネーパートナーズ -外為を誠実に-

外貨投資 転ばぬ先の智慧

最新の記事

第871回 日銀の「次の出方」に対する関心が強まる

2023年10月23日

 足元で米2年債と米10年債の利回り格差=逆イールドが急速に縮小しており、先週末に向けては過去1年で最小となった。これは、次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)において政策金利が据え置かれることが確実視される一方、高金利長期化バイアスが強まっていることを如実に表している。
 既知のとおり、米10年債利回りは先週一時5%台に乗せる動きを見せ、NYダウ平均は18日から20日に3日続落、合計で870ドル余りの下落となった。市場では「米10年債利回りが5%を超えてくると株式から債券への資金シフトが加速する」と見る向きが多い模様であるが、仮にそうなれば米国債の価格が強含みとなり、結果、利回りの上昇余地は限られるということにもなるということは再認識しておきたい。
 また、先週19日にNYエコノミッククラブで講演したパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は「利回り上昇は利上げの必要性低下を意味し得る」との見解を示しており、総じて米10年債利回りの上昇がそろそろピークに近付いているといった感もないではない。

 足元の米金利上昇はドル/円を再び150円近辺まで持ち上げる一因となっているが、150円手前のところではガッチリと上値が押さえられたままという状況を続けている。150円台を積極的に攻めるためのきっかけが欲しいところなのだろうが、本邦当局による介入への警戒が拭い切れないことも事実であろう。
 また、先週17日の欧州時間に「日銀の24年度の物価見通しは2%以上に上方修正される公算が大きい」と伝わるなどしたことで、市場において日銀の「次の出方」に対する関心が一層強まり始めていることも軽視できないものと思われる。
 今月末に控える日銀金融政策決定会合において議論される経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、23年度と24年度の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)の見通しが上方修正される公算は「確かに大きい」と考えられる。
 日本経済新聞が実施したエコノミスト調査によると、来年4月のマイナス金利解除を予想する向きが多かったという。やはり、来年の春季労使交渉(賃上げ)の行方を見定めることが必要ということになるのだろうが、それよりも前の段階で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の再修正が行われる可能性もないではない。なかには、今月末の日銀会合で長期金利の誘導目標上限を1.5%にまで拡大する可能性があると見る向きもあった。つまるところ、日銀会合について「今しばらくは無風で通過」と決めてかかることには慎重であらねばなるまい。

 なお、市場には「10-12月以降に米国景気が顕著に減速傾向を強める」と見る向きも少なくはない。11月に入って10月分の各種ハードデータが出てくると、それが実感されるようになる可能性もある。すでに、足元では住宅ローンの申請件数が約28年ぶりの低水準に落ち込んでおり、10月からは学生ローンの返済猶予終了の影響も各所に現れてくるだろう。財政政策の効果が長く続いていたことの反応も出てくるだろうし、今年の米年末商戦について「一段と盛り上がる」と見る向きは少数派である。
 つまるところ、今しばらくドル/円は積極的に手掛けにくい。中東情勢の行方や米債務膨張への懸念などによって、米10年債利回りが5%超、ドル/円が150円超の水準に浮上する可能性もないではないが、それらは長い目でドル売り材料に転じる可能性もある。
 個人的にはユーロ/ドルと短期で向き合う算段で臨んでおり、目下は1.055ドル処を軸とした1.045ドル-1.065ドルのレンジ内での値動きを想定して向き合うことを基本としている。今週26日の欧州中央銀行(ECB)理事会では政策金利を据え置くことが確実視されているが、あらためてタカ派姿勢の温存方針を強調してくる可能性は十分にあり、市場の反応を注視しておきたい。

(10/23 08:00)

このページの先頭へ

このページの先頭へ

プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。


FX取引(外国為替証拠金取引)、商品CFD取引、証券取引、および暗号資産CFD取引(暗号資産関連店頭デリバティブ取引)に関するご注意


【パートナーズFXおよびパートナーズFXnano】
パートナーズFXおよびパートナーズFXnanoは、取引時の価格またはスワップポイントの変動、およびスワップポイントは支払いとなる場合があることにより、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。パートナーズFXおよびパートナーズFXnanoの取引に必要な証拠金は、取引の額の4%以上の額で、証拠金の約25倍までの取引が可能です。法人コースの建玉必要証拠金金額は原則、一般社団法人金融先物取引業協会が算出した通貨ペアごとの為替リスク想定比率を取引の額に乗じて得た額とします。為替リスク想定比率とは、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第31項第1号に規定される定量的計算モデルを用い算出します。但し、一般社団法人金融先物取引業協会が為替リスク想定比率を算出していない通貨ペアにつきましては、一般社団法人金融先物取引業協会と同様の算出方法にて当社が算出した為替リスク想定比率を使用しております。取引手数料は無料です。なお、外貨両替については1通貨あたり0.20円、受渡取引については1通貨あたり0.10円の手数料をいただきます。

【CFD-Metals】
CFD-Metalsは、取引時の価格またはスワップポイントの変動、およびスワップポイントは支払いとなる場合があることにより、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。CFD-Metalsの取引に必要な証拠金は、取引の額の5%以上の額で、証拠金の約20倍までの取引が可能です。

【証券】
国内上場有価証券の売買等に当たっては、最大で約定代金の2.75%の手数料(消費税込み)、最低手数料は取引形態等により異なり最大で2,750円(消費税込み)をいただきます。有価証券のお預りが無く、一定期間証券口座のご利用が無い場合等は、別紙 ①「手数料等のご案内」に記載の 証券口座維持管理手数料1,100円(消費税込み)をいただきます。国内上場有価証券等は、株式相場、金利水準、為替相場、不動産相場、商品相場等の価格の変動等および有価証券の発行者等の信用状況(財務・経営状況を含む)の悪化等それらに関する外部評価の変化等を直接の原因として損失が生ずるおそれ(元本欠損リスク)があります。

【暗号資産CFD】
暗号資産は法定通貨(本邦通貨又は外国通貨)ではなく、特定の者によりその価値を保証されているものではありません。暗号資産は、代価の弁済を受ける者の同意がある場合に限り代価の弁済に使用することができます。暗号資産CFDは、取引時の価格の変動により、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。暗号資産CFDの取引に必要な証拠金は、取引の額の50%以上の額で、証拠金の約2倍までの取引が可能です。取引にあたり、営業日をまたいで建玉を保有した場合にはレバレッジ手数料が発生します。

取引開始にあたっては契約締結前書面を熟読、ご理解いただいた上で、ご自身の判断にてお願い致します。

〈商号〉株式会社マネーパートナーズ(金融商品取引業者・商品先物取引業者)
〈金融商品取引業の登録番号〉関東財務局長(金商)第2028号
〈加入協会〉日本証券業協会 一般社団法人金融先物取引業協会 日本商品先物取引協会 一般社団法人日本暗号資産取引業協会

このページの先頭へ

FX(外為取引)・証券のマネパHOME > マーケット情報 > FXコラム > 外貨投資 転ばぬ先の智慧 > 第871回 日銀の「次の出方」に対する関心が強まる